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おもに新選組について、他自分の好きな事、日々感じた事など気の赴くままに綴ります。

新選組始末記 第6話 3
第6話 「天神橋事件」3

「土方さん、土方さん?」
土方さんの部屋の前、呼んでも返事がないので、部屋を開ける沖田さん。
留守なので引き返そうとしますが、ふと文机の上の書物に目が留まり、興味を持った様子で
それを手にしてしまいます。 
書物の表紙には、『豊玉集』と書かれてありますが…。
そうです、そうです、これはあの有名な土方さんの俳句集である『豊玉発句集』ですね。

「へぇ~、土方さんの俳句集だ。」

「公用に出て行く道や春の月 へぇ~、なかなかやりますな。」

「豊玉集、ホウは土方さんの義豊の豊、ギョクは多摩川の玉か。」

「うーん、知れば迷いしなければ迷わぬ恋の道 なんだこりゃ、あたりまえのことじゃないか。」

と、そこへ当のご本人がお戻りに。 
沖田さんに気づかれぬようそっと部屋に入る土方さん。
凄腕の沖田さんなら、気づかぬはずないと思うのに、それほど『豊玉集』に熱中しているのか、
全く分からない様子。
「しかし、土方さん恋をしているな。」

この時、やっと気配を感じたのか、ふと後ろを見た沖田さん。 
「土方さんっ!」 本当にビックリしたみたい。 

「総司てめぇ、無断で人の書いたもの読みやがってっ!」 

「いやぁ、誰にも言いません、本当です。」 
  
「当たり前だ、もし誰かにしゃべりやがったら、叩き殺すぞっ!」 

「こわいなあ、言いませんよ。」

「しかし土方さん、恋をしているんですか?」 土方さんの顔を覗き込むように尋ねる沖田さん。

「このやろう、からかう気だなっ!」

飛び掛ろうとする土方さんを交わし、庭に逃げる沖田さん、ここから二人の鬼ごっこ開始でーす。 
子供の様に追いかけっこする二人の姿は、とーっても微笑ましいです。 
最後は沖田さんを油断させて捕まえ、馬乗りで「人には言わないと誓え」と迫る土方さんですが、
二人の様子を見ていた為三郎クン、なんと土方さんの肩を棒っきれでポカリ。
うううー、鬼副長にこんな事できるのは、為三郎クンと総司だけですね。すごいぞ、為三郎。
驚いて振り向いた土方さん。
そこにいる少年を「なんだこいつ、しかたねぇな。」とでも言うような目で見るだけ。
そして、何も言わずに総司から離れます。
うー、やっぱり優しいですねぇ、子供には怒らない、絶対にいい人だよー。

為三郎クンに起こされ、外に行こうと誘われた沖田さん。
「よし」と言いながら、縁側に腰掛ける土方さんに近づいて「知れば迷いしなければ迷わぬ…」と
まだからかいに行くところが何とも可愛いです。土方さんをからからうのが余程楽しいと見えます。
「このやろっ! そうじっ!」
土方さんの怒鳴り声を背に急いで逃げる総司と為三郎クンでした。

それにしても沖田さん、土方さんに何か用事ではなかったのでしょうか?
鬼ごっこにかまけて、用事を忘れちゃったのかな? 
まあ、そういうことにしておきましょうかね。

総司たちが去った後、入れ替わりに現れたのは近藤さん。
「おい、どうした、何かあったのか?」

「いえ、何でもありません。」 ちょとうろたえた感じで丁寧語で答える土方さんが、なんか笑えます。

「総司がな、お前にホウ?あっ、豊玉集を読ませてもらえと言っていたが、何のことだ?」

「ちっ、あのやろうっ!」 怒る土方さんですが、その手には当の『豊玉集』が…

「あっ、これか」 奪い取る近藤さん。

「いえ、これは違う。なんでもないんだ。」   慌てて取り返し、文箱に仕舞いこむ土方さん。
                             この慌てぶり、動揺した姿がとっても可愛く見えます。

そして、縁側に座る二人。話は、仕事の話へと変わり、
「なあ、近藤さん。会津の話は何だ?」

「う、うん、大坂商人の話が会津の耳にも入っていてな。
費用のことは心配ないから、何とか行ってやってくれという話なんだが、
まあ、俺はもともとそのつもりだが。あっ、トシ、大坂へやった山崎はその後どうしてる?」

「ああ、そろそろ戻ってくる。」                     
             ええーっ、近藤さん、「俺はもともとそのつもり」って、
             あなたは、大坂出張は諦めようって言ってたんじゃなかったですか?
             土方さんが駄目だというのに費用がなければどうしようもないだろうって言って。
             調子良すぎですよー。もう。
                     
ここの場面、重い話が多いこの作品において、数少ない楽しいシーンで、私は好きです。
ですが、言うまでもなく、実際にはこういう場面は考えられません。
なぜなら、『豊玉集』はこの時、京都にはありませんから。
この発句集は、土方さんが文久三年京に上る時に日野の実家に残してきたものです。
なので、この句集に残されている句は、すべて新選組結成前に詠まれたものでもあります。
ということで、このエピソードは成立しないと言えるのですが、
この作品では『豊玉集』が、土方さんの意外な一面を垣間見せてくれる重要なアイテムとして
用いられていて、史実云々は別にして、いいなあって思いましたよー。

                                                   次回につづく・・・
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