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おもに新選組について、他自分の好きな事、日々感じた事など気の赴くままに綴ります。

新選組始末記 第13話 8
第13話 「壬生の嵐」8

京都守護職から親書を賜った近藤局長は、その親書を持って江戸へ行くことを
そして、その留守中は、山南総長と土方副長が指揮を取る旨、隊士全員の前で伝え、
加えて将軍が京都に入れば、いよいよ大戦(おおいくさ)になる、京都にも何が起こるかわからない、
ますます隊務に精励せよと厳しい眼差しで隊士達を鼓舞します。

実はその局長の言葉が終わった後、またひとつ波乱が・・・。

(山南)「それでは、解散する。
     罹災者救援隊の諸君は、いつものように私と一緒に来てくれ。」

意気揚々の総長にすかさず待ったをかけたのは副長。

(土方)「ちょっと待てぇ。
     焼け出されの面倒見はもうおしまいだ。
     代わりに新しく西本願寺探索隊を編成する。」 

(山) 「土方君・・・君は。」     驚き顔の総長。
     
(土) 「あの寺は、長州の残党を匿っているという噂がもっぱらだ。
     また、壬生に近いので寺に潜んで新選組を探っているという噂もある。
     嘘か本当か確かめる。隊長は俺が直接務める。」 

(山) 「土方君、被災者達はどうなるんだ?
     今日も我々が来るのを首を長くして待っているんだ。」 

(土) 「そんな仕事は町奉行所にやらせろっ。
     市中も満足に取り締まれねぇような奉行所には打って付けだ。」

土方さんとの話では埒が明かないと思ったか、山南さんは近藤局長の前に歩み出ると
判断を仰ぎます。

(山) 「局長、ご採決を。」          

が、山南さんの顔を厳しい眼差しでじっと見ながら発した局長の一言は、

「土方の言が正しい。」 

その言葉だけを残して、立ち去る局長。
副長の解散だの言葉で、引き上げていく隊士達。
後には、一人呆然と立ちつくす山南さんの姿。
そして、その寂しげな背中を心配そうに見つめていたのは、
沖田さんともう一人、藤堂さんの二人でした。

この時の、山南さんの胸中はどんなものだったでしょう。
おそらく、局長は自分に賛同してくれると思ったと思うのです。
賞金を焼け出された人たちの為に出してくれた局長です。
救援活動をねぎらい、衣服や食べ物もできるだけ出してやれと言ってくれた局長です。
それが、手のひらを返したように今は拒否された。
かなりのショックだったに違いありません。

ただ、あの時は、確かにあの時点ではそれでよかった。
でも、ここに来て情勢が変わり、新選組として、組織として
今は、救援活動よりも優先してすべきことができたということなのだと思います。

近藤局長だって、被災者はどうなってもいいと思っているわけでは決してないでしょう。
けれど、新選組局長として、情勢を見極め、組織として今何を一番にすべきかを考えるのは
当然であり、臨機応変に対応していくことは長としての責務ですから、
状況に応じて対応を変えるのは当たり前のこと。
もし、それができなければ、組織は存続できなくなってしまいます。
だから、今回は土方さんを支持した。
ですが、おそらく、その思いは山南さんには伝わっていない。
それは、やはり新選組に対する考え方、思いの違いの所為だと思います。

でも、山南総長は、新選組をいったいどういう組織にしたいのでしょう?
総長として、どんな方向にもっていきたいのか?それがいまひとつ、わかりません。
今にも長州が攻めてくるかもしれないという状況下で、今、新選組が地域のボランティア活動に
精を出すことが本当に正しいことなのか?
そう考えると、心情的には山南さんを支持したい気持ちも大きいですが、
どうしても疑問符がついてしまいます。

部屋を出た山南さんに声をかけた沖田さん。

(沖)「山南さん。」

(山)「総司君か。」

(沖)「あまり気にしないほうがいいですよ。
    土方さんは、新選組を考えるあまり、つい言葉が強くなるんです。」

(山)「ふっ、そうかな。
    私は・・・、土方君とはもう折り合えない気がする。もとになる考え方のところでね。」

(沖)「山南さん。」

(山)「そうだ、愚痴に聞こえたら許してくれ。」

去っていく山南さんを見る沖田さんの本当に心配そうな表情。
でも、その漠然とした心配は、やがて現実のものとなって
沖田さんの身にも降りかかってくることになると思うと、辛くてなりません。

場面は変わって、部屋に戻ってきた近藤、土方の両名。
そして、土方さんはひとり、ものすごく苛立っているご様子。

(土)「山南のやろう、ちぇっ、どうしてあいつには俺の言うことがわからないんだっ!」

腕組みをし、黙って聞いている近藤さん。

(土)「近藤さん、今あんたに江戸に行かれることがだんだん心細くなってきたぜ。
    俺だけで、留守を守り通せるかどうか。」

またもでました、副長の弱気発言。
副長の口から、心細いなどという言葉が出るとは。
でも、土方さんだって色々悩み、苦しみながら新選組のことを支えてるんですよね。

(近)「守れるさ。嵐だ。嵐なんだよ、歳。」

(土)「ええ?」

(近)「新選組は今、内からも外からも吹き荒れる嵐の中にいるんだ。
    お前と山南の争いも、当然起きてくる嵐のひとつだ。

    それにな、新選組はいつも嵐の中を歩まなければならない。
    一難が去ってもまたすぐ次の一難が来る。これは避けられない。
    おそらくこれが新選組の運命だろう。

    だがな、歳。
    お前と俺が最後まで手を組んでこの嵐の中を突っ走れば、怖いものは何一つないっ!
    今度の嵐も必ず突き抜けられる。
    その為にも俺は、必ず将軍を江戸から連れて来る。」

(土)「近藤さん、よくわかった。」

局長の言葉に納得したような土方さん。
でも・・・

私も局長には江戸へ行って欲しくありません。
だって、だって、留守中の京都では大変なことが起こってしまうから。
それにこの江戸下りで、局長は伊東さんと出会い、京都に呼び寄せることになるのだから。
江戸へ行っていいことなんて何もないのに・・・。

けれど、新選組に吹く嵐が、これから更に激しさを増し、
まだまだ幾度も襲い掛かってくることになろうとは、
今はまだ誰も知る由もないことなのですよね。

堅い話から一転、思い出したように「ところで、総司のあの娘な、どうする?」と問う土方さんに
お孝さんが良い手を考えてくれた、女には男が持っていない知恵があると笑う局長。
反対に「お前もそろそろ休息所を設けたらどうだ?」と水を向けらられ、
「あ?ああ、ははは。」とあいまいに苦い笑いで誤魔化す土方さん。

これまでの重い雰囲気から、少し場が和んだかに見えましたが、
すぐに真剣な面持ちで夕日の方向を見上げる局長、そして副長。
別の場所で夕日に照らされる沖田さんの姿。
転じて、真っ赤な夕日が映し出され、エンディングナレーション。


  この時、近藤勇の胸中をよぎるものは、わが身の移り変わり。

  一介の浪士が、己の運命を京の風雲に託して上洛。

  生死を越えて、二年(ふたとせ)の後、今、いやしくも京都守護職の信任を得て

  その親書を携え、江戸に向わんとする。まさに感慨無量。

  京の空を茜に染める夕映えの輝きは、何を占うのか?

  前途にいかなる嵐ありとて我往かん。

  その心中は、男の気概に満ち満ちていた。




物語も中盤となり、これから終盤に向け更に色々なエピソードが繰り広げらることになりますが、
(ほとんどが辛いお話になるんですけどね。)
次回の第14話を経て、いよいよ山南さんの例の事件へと話は進みます。
私にとっては運命の第15話と16話。
今回も随分と長くなってしまいましたし、うまくまとめられるか心配はありますが、
がんばってUPします。

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新選組始末記 第13話 7
第13話 「壬生の嵐」7

蛤御門の変の後、朝廷は7月に長州追討の勅命を幕府に下すも、諸藩は容易に動こうとはせず、
8月には将軍自らが陣頭に立つと発表したが、時はいたずらに流れ、既に9月。
山南さんと沖田さんがおすみさんの家に出向いていた頃、
屯所では、局長、副長をはじめ、永倉、原田、井上、藤堂の幹部連中が集まり
その件について話し合いをしていました。

長州征伐の勅命が出てから二ヶ月が経つが、幕府の総督は決まらず、
越前、尾張、紀伊の御三家でたらい回しにしていて、しかもどこも引き受ける気配はない状態。
そんなでは、幕府が攻めていく前に長州のほうから攻め上ってくる。
もう、江戸の将軍が陣頭に立たなければ駄目だというのが皆の見解。

そして、その思いは局長も同じで、彼は既に守護職と禁裏守衛総督に
将軍が急遽江戸を立つよう嘆願書を出してきたとのこと。
しかし、返事は無しのつぶてで、土方さんも幕府はどこまで腐ってしまったのか、
このままずるずるいけば、長州征伐などどこかにいってしまう、
そうなれば、幕府などないのと同じになると、怒りを顕に。
ですが、局長には今考えていることがあるとのこと。

(土)「考えていること? なんだ?」    え?俺は初耳だぞ?といった顔の土方さん。

何も言わず、おもむろに障子を開けて廊下に出る局長。
扇子を仰ぎながら、縁側にしゃがむと横に来た土方さんに俺は江戸へ行こうと思うと告げます。
将軍に会って直訴し、江戸城から京都に連れて来ると。

(土)「あんたが将軍に直訴か・・・。なるほどな。」

と、そこへ戻ってきた山南、沖田の両名。

(沖) 「ただ今戻りました。」

(土) 「医者の家に金を届けに行ったにしちゃあ、随分と手間がかかったな。」 
                           
うわ、またも嫌味全開の副長さん。
そして、総司の方に目をやるなり

    「おい、総司? おめぇ、酔ってるな?」と。 

しっかりしているつもりでも、副長の目は誤魔化せませんね。  

(山) 「土方君、まあ、いいじゃないか。総司君だって酔いたい時があるんだ。」 

(土) 「よかねえっ だいたいあんた、総長のくせに隊士を甘やかし過ぎる。
     その分だけみんな俺にツケが回ってくる。」

(山) 「土方君、ツケとはどういうことだ?」

ここで、また総長と副長のバトル勃発。

(土) 「あんたが隊士を骨抜きにした分だけ、俺が鍛え直さなきゃならんという事だ。」

(原) 「副長、総司はきっとあの娘の憎しみが解けなくて、それで酒を飲んだんだ。
     それほどまで言わなくたって。」 

(土) 「そんなことはわかってる。口を出すな。」  原田さんのせっかくの助け舟も撃沈です。

(山) 「土方君、ここにいるのはみんな、江戸の試衛館の仲間だ。
     仲間の一人に辛いことがあった時には、皆でその悩みを慰めあったっていいじゃないか。
     それが、試衛館の良さだったはずだ。」

鋭い目で山南さんに向きあう土方さん。
一呼吸おき、落ち着いた口調で話し始めます。

「山南さんよぉ、あんた間違ってるよ。ここは江戸じゃねぇ。試衛館でもねぇ。
 俺たちゃあ新選組だ。試衛館はもう消えた。あるのは京都の新選組だけだ。」

(山) 「土方君。」

そして、口調は激しくなり、

(土) 「いいかっ!、もっとはっきり言うっ!
     おためごかしの焼き出されの面倒見なんざ、もうやめろっ
     そういうことが、新選組の行く道を狂わせるんだっ。
     新選組が人斬りと言われて何が恐ろしいんだ?狼と言われて何が悲しいんだ?
     それでいいじゃねぇか。
     近藤さんは言ったはずだ。今の世の評判なんざ気にするなと。
     俺たちゃあ百年、二百年先の世の評判を考えりゃあいいんだ。」

そうですか、こういうことだったのですね。
こういう思いをずっと抱いて、山南さん達の行動を見ていたんですね。
それで、今までの不機嫌そうだった理由も嫌味連発の理由もわかった気がします。
けれど、この作品の土方さんは、ちょっと子供っぽいところがありますよね。
何かあるとすぐに不機嫌そうになるところなど、特にね。

(山) 「土方君、君は間違っている。」

(土) 「それも後の世の人間の決めることだ。今、あんたや俺の決めることじゃねぇ。」
 
(山) 「そんなことじゃないっ、私の言いたいことはっ!」

ここで、「二人とも、もうやめろっ!」と局長の声。
それで、ここでの二人の諍いは、一先ず終わりとなるのですが、
山南さんが言いたかったこととは何だったのか?
本当は、もう少し聞いてみたかったです。

ここでも、明らかに二人の新選組に対する考え方の違いが浮き彫りにされています。
昔とあまりかわらない考えの山南さん、絶えず前だけを見て気持ちを切り替えていく土方さん。
顔を合わせれば、口を開けばどうしても、言い争いになってしまう二人。
二人の考え方は、ますます離れていってしまっているように感じます。

飲みつけぬ酒を飲んで苦しそうな総司を寝かせてやれとの局長の言に従い、
山南さんと他の皆は総司と一緒に引き上げて行きますが、
一人残った土方さん、意外にも苦い顔で小さくため息をつき、先ほどの威勢はどこへやら、
トボトボと力ない様子で局長の居る座敷へと上がります。

(土)「なあ・・・、近藤さんよ。俺が総司の心配をしてねぇと思うか?
    俺だって総司のことは気にしてる。玄沢の一件についちゃあ、寝覚めはよくねぇ。
    だがなあ、今俺が甘い顔をみせりゃあ・・・」  

近藤さんだけに見せる土方さんの一面。
そこまで黙って聞いていた近藤さん。
土方さんの言葉を遮るように「歳っ、わかっておる。」と優しい眼差し。
しばし見詰め合うと、土方さんも安心したような穏やかな表情に。
こちらの二人は、最後まで語らなくても、気持ちが通じ合うんですね。

そして、近藤さんは、頭を冷やしてくる、男ばかりがガミガミ言い合っても
良い知恵は浮かばないとお孝さんのいる醒ヶ井へ。
そこでお孝さんから先生がおすみさんの所へ行ってあげて欲しい、
近藤先生ならおすみさんもきっと話を聞いてくれるだろうと言われ、
なるほど、それは気がつかなかったと喜ぶ局長。
いい知恵を授かり、俺の心も決まったと江戸行きをお孝さんに打ち明けるのでした。

そう言われてみれば、父親を斬った責任は新選組にあるのに、その長たる近藤さんが今まで
おすみさんの所へ行かなかったのは、迂闊ではなかったかと。
初めから局長が出張っていれば、ここまでこじれなかったかったような気もしないでもありません。

さて、江戸へ発つと決めた近藤さんですが、これから先はどうなりますか?
実は、もうひと波乱巻き起こるのですが、続きは次回で。

                                            つづく・・・


新選組始末記 第13話 6
第13話 「壬生の嵐」6

ところは変わって、おすみさんの家。
そこには、八木さん夫婦の姿が。
どうやら、お二人もおすみさんを手伝っているようで、
往診に行ったおすみさんを夕餉の支度をして待っているところのよう。

すると、まもなくとても疲れた様子で帰ってきたおすみさん。
何も食べたくないと言いますが、身体に毒だ、明日も病人やケガ人が殺到するのに
あんたが身体を壊したらどうする?と八木さん夫婦に諭され、しぶしぶ頷いたところに
「すみさんっ!」と突然の大きな声。

「すみさんっ!、すみさんはいませんか?沖田ですっ!」

その声を聞くなり、部屋の隅に隠れるように行ってしまうおすみさん。
そこに現れたのは、山南さんに肩を借りながら、やっとの感じで歩いてきた様子の沖田さん。

(まさ)「沖田はん、どないしはりました?」

(沖)「奥さん、すみさんに話があります。すみさんは、新選組を誤解している。
    私を誤解しているんです。」

(まさ)「大きな声を出さんといておくれやす。」   おまささん、本当に困り顔。

(沖)「私は、理由があって恨まれるんだったら、どんなに恨まれたって構わない。
    しかし、これは違う。すみさんの全くの誤解なんです。」

(沖)「すみさん、すみさぁーん!」

おすみさんの後姿に大声で呼びかけるも、反応はなく・・
沖田さんの大きな声に困ったおまさんが自分が話してくるからとおすみさんの下へ。

咳き込みながらも、すみさんの誤解が解けるまではここを動かないと山南さんに告げる沖田さん。

一方、ふすまの向こうの部屋では、どうしても沖田さんには会わないと言い張るおすみさん。

(すみ)「会わしまへん、沖田はんの顔なんか、二度と見たいことおへんっ!」

(まさ)「そやけど、おすみはん。あんたは、ほんまは沖田はんが好きなんと違いますか?
     前にうちに言うたこと、あれは嘘どすか?」

(すみ)「前は・・・確かに好きどした。そやけど、今は嫌いどす。ほんまに嫌いどすっ!」

(まさ)「おすみはんっ!ひと時の気持ちの高ぶりで、大事なこと、嘘言うたらあきまへん。
     これっきりになってしまうかもしれへんのどすえ。
     もういっぺん聞きます。ほんまにあんた、沖田はんをもう好きではないんどすな?」

おまささんの言葉に返事ができなでいたおすみさんでしたが、
「すみさん、出て来てくれ。話を聞いてくれ。」という沖田さんの声を聞いたとたん、
「嫌いどすっ!うちは会わしまへん。あの人は、お父はんの言うとおり、人斬りどす。
 あの人のいる新選組は人斬りの群れどすっ!」とまた意地をはってしまうのでした。

ああ、もう少しでおすみさんの気持ちが少しだけ落ち着き、冷静になろうかという矢先だったのに・・・
沖田さんの声で、おまささんの説得が水の泡になってしまいましたー。
それにしても、彼女の頑固さは沖田さんが言ったとおり、父親譲り、いえ、それ以上ではないかと。
彼女の気持ちもわからないではないですが・・・。それにしても・・・。

さて、そこに割って入ったのが、八木さんのご主人。
おすみさんの気持ちがおさまったら、自分からも話すので今日のところはと
二人に引き取るよう促しますが、あきらめ切れない沖田さんは・・・。

「すみさんっ!そんな話はない、あんたは一方的だっ。私の話を聞けーっ。」と
大声は近所迷惑だとの山南さんの言葉にも耳を貸さず、「私は我慢できない」と暴れて・・・。
そこで「ピシャリ」といきなり彼の頬に飛んだのは山南さんの平手。
「沖田っ!、見苦しいぞ!」            

それでもあきらめきれず、山南さんに引きずられるように連れて行かれながらも、
おすみさんの名を何度も叫ぶ沖田さんでした。

沖田さん達が去った後、八木さん夫妻に明日にでもこの家を出ると言い出すおすみさん。
父親がいないこの家、新選組がいるこの村にはもう一日も居たくないと。
行くあてはなくとも、沖田さんさえいないところならどこでもいいのだと。
ですが、その決心も、八木さんのご主人の病人やけが人をどうする、
みんなはあんたを頼りにしているという一言で揺らぎ、泣き崩れるしかありませんでした。

本来ならば、おすみさんは医者ではないから、いくら頼りにされていると言われても
病人やけが人のことは診る必要はないし、冷たい言い方をすれば、その人達のことは
考えなくてもよく、どうしても出て行きたいのであれば、行くこともできるはずなんです。
それでもいいのです。
でも、それができないところに頑固さだけではない彼女の優しい性格が、表れている気がします。
そして、そんな彼女だからこそ、沖田さんも好きになったのかもしれません。

ああ~、これでまた二人の距離は、ますます離れてしまったのではないでしょうか。
せっかくの山南さんの二人を思う気持ちも裏目に出てしまいました。
悲しいかな、嫌な予感は的中することに。
なぜ、いつもは慎重に物事を運ぶイメージの山南さんが、自力で歩けないほど飲んだ沖田さんを
おすみさんに会わせることにしてしまったのか?
そこが、どうしても腑に落ちません。
まさか、二人を思うあまり、彼もあせったとか?
なあんてことは、うーん、やっぱり考えられませんよねぇ。

結局、沖田さんもおすみさんも互いに心の傷を更に広げることになってしまいました。
この切ない心のすれ違いは、いったいつまで続くのでしょうか?

                                           次回につづく・・・




新選組始末記 第13話 5
第13話 「壬生の嵐」5

「やってるな、総司君。」

自棄酒をあおっている沖田さんのもとに現れたのは山南さん。

(沖)「山南さん、ここがよくわかった。でもここは、私一人の休息所ですから。」

(山)「八木さんのお奥さんに聞いたんだよ。奥さん、心配していたぞ。
    いつになく、君の言葉が激しいって。」

そうですか、おまささんに聞いてきたのですね。
それで、心配して様子を見に来てくれたわけですね。
やっぱり優しいなあ、山南さんは。

(沖)「激しくもなりますよっ! あの頑固娘にはっ
    私を誤解して、誤解したまま憎んでいる。それが我慢できない、私にはっ!」

激しい口調でくってかかり、山南さんの手を掴み、訴えるような目で山南さんを見つめる沖田さん。
その眼差しには、彼の胸の痛みすべてが反映されているような悲壮感すらあります。

(山)「総司君、それだけあの娘のことを気にしていながら、その君がなぜ
    今まであの娘を避けてきたんだ。会ってやらなかったんだ?」

ずっと突っ伏したまま、そして、新しい徳利を持ってきた娘からはそれをひったくるという乱暴さ。
本当に日頃の沖田さんからは想像もできないような行為の連続に驚かされます。
でも、それは、それほど辛くてたまらない、苦しいという心の現われなのかもしれません。

(沖)「私は、こんな身体です。私がどんなに考えてもすみさんを幸せにはできない。」

ああ、そうだったのですね。
自分の病を気にして、だから敢えておすみさんから距離を置いていた。
               
(山)「そう気持ちを決めた君が、ではなぜ今苦しむんだ?なぜ、ずっと悩んでいるんだ?」
             
おお、さすが山南さん。鋭い質問。
その言葉に、顔を上げ、山南さんをじっと見つめる沖田さん。

(山)「私から言おうか? 君は口では色々と言っているが、ホントはすみさんのことが好きなんだよ。
    違うかね?」       

(沖)「違いません。」  おっと、沖田さん、即答しましたよ。
               今まであんなに荒れていたのにこれは意外。
               山南さんの前では自然と素直になれてしまうということでしょうか?
               それは、やはり山南さんの人徳がなせる業なのかもしれません。
          
咳き込む沖田さんに「もう無理して酒を飲むな。余計身体を悪くする。」と言って、
徳利を下に置いてしまう山南さん。
さらに激しく咳き込む沖田さんの背中をさする姿は、本当に優しさに満ちています。

(山)「総司君、私はこの前も言ったように総長でありながら、満足なこともできない。
    しかしな、君の事は本気で心配しているんだ。何でも話してくれたまえ。」

どこまでも優しく、そして暖かい。
沖田さんにとっては、本当に頼りにできる、信頼できるかけがえのない人に違いありません。
ただ・・・

(沖)「池田屋以来、新選組は大変な立場になっています。
    近藤局長は、その苦しみを一人で背負っています。
    土方さんは、局長を助けて自分ひとりで鬼の役を買って出て隊をまとめている。
    そんな二人を見ていると自分のことなんて言えない。
    ここで山南さんに言った。さっぱりしました。もういい、あの娘のことは諦めました。」

ただ、沖田さんにとって山南さんは、大事な人であることには間違いないけれど、
やっぱり、3番目のお兄さんなのかな?と。
人の気持ちはそう単純なものではないとわかっているつもりですが、敢えて順番をつけるとすると
そうなるのかな?と思えるような上記の台詞だった気がします。

そんな風に思ってしまうは、私がひねくれ者だからかもしれませんが、
この言葉を聞いた時、なぜか山南さんが少し可哀想に思えてしまいました。
その反面、土方さんのことはわかってくれているんだと嬉しく思う私もいました。
(こんなところでも、つい土方贔屓が~。どうか広い心でお許しを~。

(山)「違うよ、総司君。私が言いたいのはそんなことではない。」

そうですよね、誰も諦めろなんて言ってませんよね。
むしろその逆でしょ?

(山)「総司君、今夜これからすみさんの所へ行きたまえ。
    行って正直に今言った事を話したまえ。」      えっ?今から?

(沖)「いやあ・・・、いやあ・・・」    首を振り、そんなことはできないとでも言っている様な声。

確かに良い提案だとは思います。けれど、何も今日でなくても・・・という気も。
なぜって、なにしろぐでんぐでんに酔っ払っている沖田さんなので、果たして大丈夫かなと。

(山)「私からみれば、両方とも意地を張っているんだ。まず君からその意地を捨てるんだ。
    行きたまえ。一人で行けなかったら私が着いて行こう。」

代金を支払う山南さんに自分が飲んだのだから自分が払うと言う沖田さんですが、
腹立ち紛れに賞金を使ってはいけない、その金は君の金ではないはずだと
ここはきっぱりと言い放つ山南さん。
と、沖田さん、突然水桶に向かったかと思うと、人の家に行くのに酒を飲んで行ってはまずいと
水をがぶ飲みするのでした。

どうやら、おすみさんの家に行く決心をしたようですが・・・
うーん、ホントにホントに大丈夫かな?

                                        次回へつづく・・・



新選組始末記 第13話 4
第13話 「壬生の嵐」4

山南さんに促され、おすみさんの家に急いだであろう沖田さん。
でも、少々様子がおかしい感じ。

というのも、沖田さんの話の相手はおすみさんではなく、おまささん。
しかも、おすみさんの家の中ではなく、外での立ち話。

(沖)「なぜですか?」  沖田さん、なにやら怒っているみたい。

   「これは、すみさんにあげるんじゃないんです。ここにいる病気の人やケガ人の薬や
    食べる物を買って下さいと言っているんです。悪いことじゃないでしょ?」

どうやらお金を受け取ることをおすみさんが拒否したよう。

(まさ)「そう言うたんですが、おすみはん、そんな血だらけのお金はいりまへん言うて・・・」
                             
え?ちょ、ちょっとあなた、なんてことを。おすみさん、思った以上に激しい女性かと。

(沖)「血だらけの金?」  沖田さんの問いに顔を背けるおまささん。

   「これは、私たちが命がけで働いて貰った褒美の金です。血なんか付いてませんっ

沖田さんの怒声。
そうですよね、こんなことを言われて怒るなという方が無理かもしれません。

(まさ)「わかってます。そやけど、おすみはんは、お父はんがあないなことになって
     まだ気持ちが落ち着かへんのどす。」

(沖)「私は、私の用で来たんじゃないんです。近藤局長の言い付けで来たんです。
    それを何だっ!一方的なっ

いつになく大声で、怒りを顕にする沖田さん。

(まさ)「怒らんといておくれやす。」  それは無理というものですよ、おまささん。

    「おすみさんの気持ちにもなってあげておくれやす。
     沖田はんが一番、おすみはんの気持ちをわかってくれるお人やおへんか?」
                             確かにそうかもしれませんけど。

(沖)「私もそのつもりでした。しかしっ、その私にも会おうとしない。
    頑固だっ!頑なだ。まるで親父そっくりだっ

(まさ)「そんなこと言わんと。そのお金、おすみはんの気持ちが明日にでも
     落ち着いていると思うたら、うちが頂きに伺いますさかい、
     どうぞ大事に取っておいておくれやす。」

(沖)「どうせ血の付いた金なんですから、私が使ってしまいます。」

(まさ)「沖田はんっ! そんな自棄起さんといておくれやす。うちが困ります。」

おまささんの必死のとりなしにも、沖田さんの怒りは静まる様子はなく、
それどころか金は自分が使ってしまうと自棄を起こす始末。

けれど、おまささんももう少し話の持って行きようがあったのではないかと思います。
血の付いたお金だなんて、たとえ、おすみさんが本当にそう言ったのだとしても、
沖田さんにそのまま伝える必要はなかったでしょうに。
若い二人のことをいつも気にかけてくれているおまささんなのですから、
もう少し配慮して貰えたら良かったのにってね。

ですが、ここでは、おすみさんの性格、頑固さが強調され、
また沖田さんの人間くさい側面も見えるので、今後の展開を考える上においては、
なくてはならない場面という気もします。

自棄になった沖田さん、それからどうしたかといいいますと、
なんと、酒場で一人飲んだくれているではないですか。

(沖)「なんだ、偉そうにっ!  酒をどんどん持ってきてくれっ!
    聞こえないのかあっ!」  
                          あまりの荒れように店の親父も娘もビクビク。
   「金ならあるんだ。 血の付いた 血の付いた金があるんだっ!」

やはり、おすみさんの言葉にこだわらずにはいられない沖田さんのようです。
それに好きな人に自分の気持ちを理解して貰えない辛さ、苛立ち、
そんな今まで抑えてきた感情が、おすみさんの言動によって抑えきれなくなり、
ここで一気に爆発してしまったのかもしれません。
それにしても、沖田さんらしからぬ行動にビックリしましたー。

そんな荒れに荒れて一人飲んでいる彼のもとに現れた人が。
それは、なにを隠そう山南さんでした。
これから、沖田さんと山南さん、どんなやりとりが繰り広げられるのでしょううか?
というところで、ここから先はまた次回ということに。

                                            つづく・・・
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