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おもに新選組について、他自分の好きな事、日々感じた事など気の赴くままに綴ります。

新選組始末記 第14話 6
第14話 「近藤江戸下り」6

沖田さんの仲裁のおかげで、土方さんも冷静さを取り戻したようで、
落ち着いた口調で、改めて山南さんに話を向けます。

「新選組隊士に公務を離れた暮らしがあって良いか悪いか、それはまたのことにしよう。
 ただ、確かに総司の言うとおり、留守を守る山南さんと俺がいがみ合ってばかりいても
 仕方がねえ。わかったよ。」

土方さんのこういうところが好きです。 気持ちの切り替えが早い。
ただ、山南さんはというと・・・多分、土方さんとは違う思いではなかったかと。

(土)「ところで、総長。こん中に長州の残党が逃げ込んだはずだ。」

(山)「長州の残党?そんなもん、いないよ。」
 
ほら、結局、こういうことなのですね、総長。
総長は、沖田さんの思いを全く理解していないということですよね。

(土)「隠すのか?」

(山)「疑うなら、さあ、中に入って調べてくれ。」 

自ら戸を開ける山南さん。

(土)「山南。」

(山)「嘘は言わんよ。さあ、調べてくれ。」 

いいえ、嘘ですよね。
なにか平然として嘘を言う山南さんが怖いです。

山南さんの顔をしばらく見つめ、二度ほど小さく頷く副長。

(土)「そこまで言うんなら、確かにここにゃいねえんだろう。よしっ!向こうを探す。続けっ。」

とその場を去ります。

あの小さな頷きには、どんな意味があったのでしょうか?
山南さんの言葉を心から信じたのかどうかはわかりません。
本来なら、強引に家の中を調べることはできたはず。
でも、それはしなかった。
土方さんは、ここでも山南さんを信じたかったのだと思います。
だから、彼の言葉を尊重した。

山南さんが長州の残党を匿う理由はないし、新選組総長である以上、
まさか、そこまではしないだろうという思いもあったでしょう。
いえ、もしかしたら、嘘とわかっていて、それでも他の隊士の手前、
総長の顔を立てたということも?

だけど・・・。
本当に調べられたら、山南さんはいったいどうするつもりだったのでしょうか?
それとも、土方さんもそこまではしないだろうと高を括っていたとか?
山南さんの気持ちが、やはり全くわかりません。

皆が去ったあと、最後に残った沖田さんに
さっき言われたばかりなのにまた若い君に心配をかけてしまった、と謝る山南さん。
「私は、そんな風に至らない男だ。」と自分を卑下します。
もしかしたら、山南さんも沖田さんにだけには自分の弱さを見せることができ、
本音を言えるのかもしれません。

その言葉に対し、

(沖)「そんなことはありません。でも・・・くれぐれも自重して下さい。
    生意気なことを言って申し訳ありませんでした。」

と釘を刺しつつ、自分の言動を謝り去りますが、
二人の板挟みで、心を痛めている沖田さんが可哀想です。

そんな沖田さんの背中を、山南さんはいったいどんな思いで見送ったのでしょうか?

沖田さんが去り、山南さんが家の中に戻ると、
赤羽という長州藩士は、既に逃げたあとでした。
それは当たり前ですよね。
たとえ、新選組の変わり種だと言われても、新選組総長のそんな言葉を
ほいそれと信じるわけがありません。

(山)「あの赤羽という人はどうした?」
 
(明)「裏から逃げはりました。お話には聞いていましたけど、あの土方はんという人、
    ほんまに怖い人どすなあ。」

明里さんが、そんな風に思うのも無理はないかもしれません。
でも、違うんですよ。
土方さんは、誰よりも新選組を第一に思っているだけなんです。

(山)「怖いというよりか、人間の心の痛みがわからない。いや、わかろうとしない。」

そんなあ・・・、山南さん。
いくらなんでもそれはあまりに酷い言い方では?
確かに土方さんには強引なところがありますが、それは新選組を思うあまりのことと
どうして、総長の立場である山南さんはわかってあげないのか?

これは、以前にも書きましたが、二人の新選組に対する思い入れの深さの違いが原因と思います。
山南さんが、新選組総長としての立場にもかかわらず、長州者を逃がした時点で
彼の新選組への思いは、本当に薄れてきているのでは?と感じました。

今回のことを考えても、山南さんには土方さんを理解しようという気持ちは、
もはや少しもないように思えてなりません。

土方さんがなぜ、家の中を強引に調べなかったのか?
それ以前に、噂になったこの家が、なぜ今まで追求されなかったのか?
それを考えれば、もう少し違う目で土方さんのことを見られるのではないかと
思うのですが・・・。
山南さんにそんな目線は、もうないのかもしれません。

ほんの少しでも山南さんに歩み寄ろうと考える土方さんに対し、
もう理解不能と完全に拒絶し始めた感の山南さん。
ここまで来てしまったら、もはや二人の間の溝は埋まらない気もします。

京都でこんなことが起こっているなどとは知らない局長は、今、鬼神矢の如く
冬の東海道を西へ急走、その後を追うように伊東甲子太郎一行も京へ旅立ち、
まもなく局長が戻れば、新たな新選組のステージが幕を開けることになります。
それにより、山南さんの運命もまた変わっていくことになるのです。

そして、エンディングナレーション。

  近藤勇の抱く一筋の将軍擁護の志と

  伊東甲子太郎の唱える尊皇攘夷は

  果たして、わだかまりなく結ばれるものであろうか?

  こうした間も、長州征伐は宙に浮いたまま

  新選組もまた焦燥のうちに年の暮れを迎えようとしていた・・・




こうして物語は、いよいよ山南さんのあの事件へと突入します。
この作品では、2回に渡って丁寧に描かれた山南さんのエピソード。
何度もお話していますように、私の中に土方歳三という人を永遠に刻みつけ、
その後の人生に大きな影響を与えたと言っても過言ではない2話となります。

何度観ても辛く、やるせない気持ちになるお話ですが、
この作品ではどう描かれているのかを少しでもご紹介出来たらと思います。
多少時間がかかるかもしれませんが、がんぱってUPするつもりですので、
お付き合いいただける方は、よろしくお願いします。

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新選組始末記 第14話 5
第14話 「近藤江戸下り」5

一方、京都では、土方さんと山南さんの間にまた新たな騒動が、
起ころうとしていました。

屯所の一室で、一人俳句をひねっている土方さん。
あれ?ちょっとのんびりムードですが、久々のプライベートタイムでしょうか?
ですが、それもつかの間、「副長!」と入ってきたのは原田さん。
急いで句帳を隠す土方さんが、ちょっと面白いです。

が、原田さんの話は重大で、
粘った甲斐があり、今、西本願寺から長州の残党が7、8名逃げ出し、
総司が塩小路に追い詰めているという報告でした。
「どぶねずみめ、這い出したか。よしっ、行こう。」と
急ぎ剣を取って、(句帳を投げ出し)現場へと急ぐ土方さん。
追いつ追われつ、狭い路地での斬り合いは、凄まじいものでした。

そして、新選組に追われた一人の長州藩士が、命からがら逃げてきたのは、
何やら見覚えのある家の前。
そうです、そこは今さっき山南さんがやってきた明里さんの家。
こともあろうにその長州藩士は、その家に逃げ込んだのでした。

を読んでいる山南さんにお茶を入れる明里さん。
と、突然、誰かが侵入してきたような音。
「誰だっ?」 素早く剣を取り、身構える山南さん。

「長州の赤羽武人というものです。新選組に追われております。」

「新選組?」 驚いた様子の山南さん。当然です。

「長州といっても怖がらんで下さい。私は医者の出身で、奇兵隊の隊長を務めたこともある者です。
 しかしっ、京都に攻め込む無謀な者とは違うのです。」

刀に手をかけ、障子を開ける山南さん。
傷ついた長州者をしばらく見ていましたが、
「ここだ、ここへ逃げ込んだぞっ、開けろ。(ドンドンドン)新選組だ、開けろ。」と
戸を激しく叩かれると、
何を、何を血迷ったか山南総長、驚きの言葉を発します。

彼に「さあ、隠れたまえ。」と・・・  えーっ?

「かたじけない。あなたは?」 

「新選組総長、山南敬助だ。」

「し、新選組ぃ~。」
  
赤羽さんの驚きは相当なものだったでしょう。
何しろ逃げ込んだ先が、新選組総長の元だったのですから。
今にも泣き出しそうな顔が、それを物語っていました。

「心配するな。君が長州の変わり種のように私も新選組の変わり種だ。さっ。」

ちょっ、ちょっと待って下さい。
いくらなんでも新選組総長が、そんなことをしてはダメでしょうに。
どういうつもりで? 山南さんの気持ちが全くわかりません。
まさか、土方さんに対する当てつけ?
だとしても、新選組隊士である以上、してはいけないことですよね。
人に情けを掛けてはいけないわけではないですが、立場は考えないと。
それに、彼らを捕らえようと命懸けで追いかけ戦っている隊士たちの思いは
どうなるの?ということにもなります。

赤羽さんを隠れさせ、外に出る山南さん。
待ち構えていたのは、土方さんはじめ沖田さんと原田さん、他の隊士たち。

「山南さんっ!」 驚きの声をあげたのは土方さん。

沖田さんと原田さんを見回し、

「そうかっ、やはり隊士の噂は本当だったなっ。
 山南さん、きたねぇぞっ!休息所を持ったなら持ったで、なぜ届け出ねえ。」

と食ってかかる土方さんですが、言っていることはごもっとも。
ですが、土方さんの怒りようを考えると、山南さんに対する隊士たちの噂を追求したわけではないし、
あの時、山南さんに休息所について問いただした時、そんなものはないと言った山南さんの言葉を
結構信じていたのかなという気がしました。
土方さんだって、何でもかんでも疑ってばかりいるわけではないんじゃないかと。
いがみ合ってはいるけれど、山南さんのことを決して憎んだり、嫌ったりしているわけではないと
改めて感じました。

(山)「何がきたないんだ。ここは君の言うような休息所ではない。
    私が本を読む場所だ。近頃の屯所は騒々しくて、落ち着いて満足に本も読めないからね。」

(土)「本を読む場所だと体裁のいいことを言うな。隠すな。女がいるんだろう?」

(山)「別に隠しはしない。しかし、繰り返すがここは休息所ではない。
    新選組の密談には絶対に使わせない。だから、届けない。」

さっき、明里さんに話したままを土方さんに伝える山南さんですが、
でも、なんだか屁理屈にしか聞こえないのは、私が土方さん贔屓ゆえでしょうか?

(土)「山南、そこまで俺に逆らう気かっ!」 

堪忍袋の尾が切れたと言わんばかりに山南さんの胸ぐらを掴む土方さん。
と、そこへ割って入ったのが沖田さん。

(沖)「二人共、やめて下さいっ!」

(沖)「土方さん、ここは私が永倉さんや原田さんに相談して、山南さんに本を読んで貰うために
    借りた家です。」

驚いたような土方さんの顔。
かなりのショックだったようで、何か言おうにも言葉が出ない様子。
それもそうかもしれません。
試衛館メンバーの幹部たちが、自分に内緒でこういうことをしていたということですから。

(沖)「女の人もいます。 でも、それでもいいじゃないですか。
    山南さんの言うように公務に関わりのない場所があってなぜ悪いんです。

    土方さんは、休息所も公務に関わりを持たせようとする。
    それじゃ、本当の休息所じゃないっ
    新選組が※特定の場所を持ったからって、それを咎めることはできません。

    それに二人共、近藤局長が江戸へ行った後、
    なんでそんなにいがみ合ってばかりいるんですかっ
    それで、局長代理を務める総長と副長と言えるんですかあっ!

沖田さん、よくぞ言って下さいました。
でも、ひどく興奮したせいか「総司っ!」という土方さんの声を聞くと同時に
激しく咳き込んでしまいます。
長州の残党と戦い、彼らを追ってきた後のこれですから、病の身には無理もないかと。

沖田さんの言葉にぐぅの音も出ない様子で、黙ってしまう二人。
沖田さんのことをとても大事に思っている二人ですから、
彼に言われるのが、一番身に堪えるのかもしれません。
ホントに、この二人に面と向かってこんな事を言えるのは、局長の他には彼しかいません。
そして、二人の関係に誰よりも心痛めているのもまた、この沖田さんなのだと思います。

                                                  つづく・・・

   
    上記、沖田さんのセリフの中の<※特定の>という箇所についてですが、
      実は何度聞いてもよく聞き取れず、私にはこう聞こえる気がしたので、
      この言葉を記載しましたが、とても曖昧です。
      なんとかの場所と言っていることは確かなのですが、その前の言葉は
      違う可能性が高いかもと思います。何卒ご了承下さい。
      もし、お分かりの方がいらっしゃいましたら、お教え頂けると嬉しいです。
      よろしくお願いします。

新選組始末記 第14話 4
第14話 「近藤江戸下り」4

さて、江戸の近藤局長はというと、京都守護職の親書を江戸城において
老中松前伊豆守に提出したのですが・・・。

老中からは、会津殿の親書は確かに拝読した、京都での苦衷、心から同情する、
この親書は早速、上様にご覧いただくつもりとの言葉を賜りますが、
肝心の上様御進発の日時を尋ねるに至り、老中の口から出たのは、
思いもよらぬ言葉でした。

それは、「上様は御進発なさらぬ。いや、できぬ。」というもの。
なにゆえかと強く詰め寄る局長が聞いたのは、
「幕府には金がない。」
「上様御進発をまかなう金がない。財政は極度に逼迫しておる。」という言葉。

上様が大坂に赴かないのは、長州が恐ろしいのでもなんでもなく、
道中の経費がないからだというのです。

(老中)「近藤、察してくれい。
     これが、その方らの誠忠心に答えられる真の理由だ。」

(局) 「松前様・・・。」

(老) 「恥だ。恥を忍んで言う。近藤、この松前、泣いても泣ききれんのだ。」
    
老中にここまで言われてしまったら、さすがの局長もゴリ押しはできず、
「ご心中、お察し申し上げます・・・。」と
ただただ、深々と頭を下げるしかありませんでした。

試衛館に戻った局長は、永倉さんら供の隊士達にこのことを伝えますが、
これは、ここ限りの話で他言は無用とのことにします。

そして、そういう事情なら、これ以上老中たちを追い回しても仕方がなく、
京都での新選組の役目はいよいよ重くなるので、隊士を募集して帰ろうという
永倉さんの意見に
「俺もそう考えていたところだ。やはり武士は東国に限るからなあ。」と局長も賛同。
藤堂さんに
「藤堂、この間話していた伊東さんに明日にでも会おう。」と自ら言い出すのでした。

隊士募集の話にここぞとばかり、伊東さんのことを切り出そうと身を乗り出したとたん、
武田観柳斎お得意のおべっかに邪魔されてしまったので、
局長からのこの申し出は、藤堂さんには、さぞ嬉しかったに違いありません。
「はいっ、早速手配します。」との元気な返事にもその思いが感じられました。

伊東道場に赴いたのは、近藤局長と藤堂さん。

(伊東)「近藤先生のご存念と一介の武芸者に過ぎぬこの伊東へのご厚情、よーくわかりました。
     しかし、新選組入隊の話は、私にとってかなり重要です。
     しばらく時をお貸し下さい。」

うーん、なんとももったいつけたような言い方が、嫌ですね。
もし、この場に土方さんがいたら、きっと嫌~な顔してたと思います。

(局) 「当然です。ご勘考の暇もなく承諾されたら、私の方で考えたでしょう。
     いや、十分お考え下さい。
     しかし、結論はできるだけ入隊の方向でおまとめ願いたい。あはははは・・・。」

和やかな雰囲気で話は進みますが、伊東が一つだけ確認したいことがあるとのこと。
それは、局長があくまでも尊皇攘夷の志を持っているのかどうかということでした。
局長の答えは、当然のごとくイエス。
ただ、長州とはやり方が違うだけだというのもでした。

でも、実を言えば、この伊東とも違うわけで・・・。
そのことが、のちのちの問題を引き起こす原因になってしまうのです。
だから、本当はもっと議論を尽くして、お互いに理解し合った上で入隊を勧めるべきではなかったかと
思えてなりません。

が、時間もない中、優秀な人材ということで、局長も伊東の力が是非欲しいと思ったに違いなく、
これもまた運命と言わざるを得ない気がします。

近藤局長が、京都での再会を楽しみしていると言い残して辞した後、
伊東たちは京都行きを決意します。

が、「近藤と一緒に行くのですか?」との篠原泰之進の問いに

「人間の売り買いは大事だ。絶対に自分から安売りをしてはならぬ。
 近藤が発った後、ゆっくり東海道を上るさ。あっはははは・・・。」と答えた伊東。

対面後、近藤局長をなかなかの人物だ、さすがは一党を率いる男だと評価したにもかかわらず、
新選組に対し、相変わらずどこか見下したような馬鹿にしたような言動がめだつ伊東一派です。
でも、そんな伊東たちも笑っていられるのは今のうちなのですよね。
この先、京都で待ち受ける過酷な運命は、まだ知る由もありません。

朝、出立支度の局長たち。
そこへ永倉さんが、新しく補充した隊士を京に向けて出発させたとやってきます。
人数は50人。局長もそれは心強いと満足そうです。
確かに短期間で50人もよく集められましたよね。さすが永倉さんたちです。

あとは伊東の件ですが、局長が藤堂さんに何か言ってきたかと問うも、
どうやらまだ返事はないらしく、出発前に催促してくるという藤堂さんを
「やめろ、成り行きに任せた方がよい。」と局長は諌めます。

そこで、今度は永倉さんが藤堂さんにこう話しかけるのでした。

(永)「しかし、藤堂。剣術の同門とはいいながら、お前、またばかにあの伊東さんに熱心だな?」

永倉さんの鋭い指摘に少々戸惑い気味な藤堂さん。
それはそうですよね。
まさか伊東さんに新選組を助けてもらいたいから、などどという本音を言えるわけがありません。
この場は、「はいっ、近頃…とにかく得がたい人物ですから。」となんとか無難に答えます。
が、更に永倉さんの追い打ちが。

(永)「いくら得がたいとはいっても、お前のは少し度を越してやしないか?」

(藤)「いや、それはっ。」

(局)「永倉。」

藤堂さんは、「それは」の後になんと言おうとしたのでしょう?
局長の遮りで、残念なことにこの話は、途切れてしまいました。
でも、局長もなぜここで遮ったのか?
単に出発前に議論させたくなかったということかもしれません。
藤堂さんの熱血さを知ればこその遮りだったのかな?という気もしますが。
やっぱり、藤堂さんの説明は、聞いておきたかったです。

永倉さんが藤堂さんに抱いたちょっとした疑問。
この時の永倉さんは、おそらくさほど重要な意味を込めて聞いたわけではないと思います。
ほんの軽い気持ちで、感じたことを聞いてみただけだろうと。
ましてや、藤堂さんがこの後、ますます伊東に傾倒していくことになろうとは、
想像もしていなかったことでしょう。

将軍の引っ張り出しは失敗に終わってしまった局長でしたが、
愚痴は言えない、自分たちは京に帰って新選組の隊務にに精励しよう、
我々は、いよいよ崩れる幕府の歯止めにならなけれがならないと
決意を新たに江戸を発ちます。

そして、その後を追うように伊東甲子太郎の一行が旅立ったのは、
元治元年十一月十四日の朝でした。

                                              続く・・・

新選組始末記 第14話 3
第14話 「近藤江戸下り」3

先日、おすみさんの家で醜態を晒してしまった沖田さん。
八木さん夫妻から、おすみさんが他国へ行きたいと言っていると聞きます。
どんなことがあっても、この壬生村の近くにはいたくないと。
近藤先生が話をした後は、一時は気持ちもおさまってきていたが、
また気持ちが高ぶってきてしまたらしいとのこと。

せっかく近藤先生がお話をしてくれたのですが、どうやらその思いは
残念ながらおすみさんには届かなかったようです。

私らがどうにかするので、もう少し待って欲しいと言う八木夫妻に
こんなことまで心配をかけて申し訳ないと謝る沖田さん。
もう二度と、この間のような馬鹿な真似はしない、私に出来ることがあれば何でもすると
頭を下げるのでした。

と、そこに出かける様子の山南さんの姿。
八木夫妻に挨拶し、後を追う沖田さん。
屯所の門を出たところで声をかけます。

(沖)「山南さん。」

(山)「はぁ、総司くんか。」

(沖)「どちらへ?」

(山)「あっ、君たちの借りてくれた家に行くんだ。本を読みにね。」

えっ?君たちが借りてくれたって?それってどういう意味?
それが土方さんの言う、噂になっているという休息所なのでしょうか?
初めて聞きましたが、とにかく、そういう場所が山南さんにあるということは確かなようです。

(沖)「山南さん、あまり土方さんと争わないで下さい。
    今は、局長もいない時です。お願いします。」

(山)「その言葉、そのまま土方くんに向けてくれっ!」

いつにない強い口調で返し、厳しい表情で沖田さんを見る山南さん。
が、すぐに考え直したように
「あっ、いや、わかったよ。君に心配かけないためにもそうするよ。」と
穏やかな表情を見せて去るのでした。
こうところにも、山南さんの人柄、優しい性格が見えるような気もします。
土方さんにはない一面かなとも。                                                                                             
そして、山南さんがやってきたのは、朱雀村にある小さな一軒家。
そこにいたのは、明里さん。

ということは、やっぱりここは山南さんの休息所?

外を掃いている明里さんには目もくれず、「山南先生。」との呼びかけにも答えず、
無言で家に上がり、外に面する障子を閉める山南さん。

(明里)「嫌な先生。人が呼んでるのにぃ。」

(山) 「外では声を掛けるな。誰かに聞かれて、土方の耳にでも入ったら面倒だ。」

(明) 「すんまへん。けど、先生のお顔を見るとつい嬉しゅうて。」

(山) 「幹部の休息所な。必ず届けるようにと今日も土方に言われたんだ。
     しかし、俺は届けない。」                                                          
明里さんがいることからして、やはりここは、誰が見ても山南さんの休息所ですよね。 
なのに届けないって。山南さん、どうして?

(明) 「どうしてどす?恥ずかしいのどすかぁ?
     けど、ここは、沖田はんや永倉はん、原田はんがお金を出しおうて
     借りてくれはったんと違いますかぁ?
     うちを島原から引かしてくれはったんも沖田はんたちどっせ。」  

ええー、そうだったのですか? 
試衛館の仲間がお金を出し合って借りてくれた?
いえ、それ以前に島原から身請けするにも協力してくれたということなんですね。
驚きましたー。でも、局長と副長は知らないとうことなんですよね。
それはちょっとまずいのでは?大丈夫なのかな?
うううん、大丈夫じゃないですよね、絶対。

(山)「隊の休息所になるとね、屯所ではできない密談の場にも使われるんだ。
    私は嫌だ。ここは、お前と二人だけの巣だ。」

そうですか、だから秘密に。
山南さん、あなたの気持ちもわかります。 
でも、でも、山南さんは新選組の総長、ナンバー2の地位にいる大幹部です。
そのあなたが、自ら隊の決まりを破ってしまうというのは、やはりどうかと・・・。

ただ、それは、今の新選組のあり方、局長や特に土方さんのやり方に対する彼なりの
ささやかな反抗と受け取れるような気がしないでもありません。
やはり、山南さんの中で新選組に対する思いに何か変化が生じているような
そんな気がしてなりません。

肩を揉んでくれるという明里さんに当然のごとく背中を向ける山南さん。
すると明里さん、「嫌どす。」 と一言。

(山)「何がだ?」  と驚いたように振り向く山南さん。

(明)「後ろ向かはったら嫌どす。」  え?

(山)「前から揉めるのかぁ?なぜ私が後ろを向いちゃいけないんだ?」  確かに。

(明)「先生の後ろ姿を見ていると寂しおす。」   なんと!

(山)「はっ。」

(明)「うち、見ているだけで涙が出てきてしもうて・・・。
    そやさかい、こっち向いておくれやす。」        うーん、切ない。

そして、向かい合った形で肩を揉み始める明里さんですが、そのぎこちなさに
やっぱりやりにくいよと後ろからにしてもらう山南さんです。
確かに向かい合いでは、照れくささ100%だし、
第一、前からではちっとも気持ちよくないですよねぇ。
一見、微笑ましくもあるやりとり。
でもなぜか物悲しさを感じてしまう場面でもありました。

肩を揉みながら、先生がいなかったら生きてられないと言う明里さんに
私は、新選組でもうまくいかない人間だが、世の中にお前のような人間が
一人でもいてくれると嬉しいと話す山南さん。

(明)「先生は、いい人どすなあ。」

(山)「土方に言わせるとな、今のこの世の中で、いい人というのは、
    いてもいなくてもいい人のことを言うんだそうだ。あっはははは・・・。」

なんと、土方さん、そんなことを言ったのですか?(土方さんなら言いそうな気もしますが。
ですが、それを自嘲気味に話す山南さんが、なんだか悲しいです。

(明)「そんなあ、先生はうちには一日でもいてくれはりゃへんと困るお人どす。」

そして、山南さんにすがりつき、こうしてもらう時が一番嬉しい、いつまでもいつまでも
こうしていたいと気持ちを伝える明里さん。

(明)「先生。」

(山)「うん?」

(明)「死んだらやどっせ。ムチャもいけまへん。」

(山)「ふっ、なぜそんなことを言う?」                                                        
(明)「心配どす。先生はあんまりにも気が真っ直ぐやし、傷つきやすおすさかい。」 

女の勘というのでしょうか。
愛する人の危うさを敏感に感じ取り、不安に駆られている明里さん。
そんな彼女の気持ちは、その表情からも痛いほど伝わってきます。
山南さんにも、そんな女の気持ちをわかって欲しいなと思います。

ずっとこうしていたいという彼女の思いが叶いますようにと
私も神様にお願いしたい。
けれど、この時、彼女が抱いた漠然とした不安は、やがて現実となって
二人の身に降りかかってくることになってしまいます。
これから先を思うと・・・その時の明里さんの気持ちを思うと・・・
本当に切なく辛いです。



                                           次回へつづく・・・



新選組始末記 第14話 2
第14話 「近藤江戸下り」2

京都を出発した近藤局長一行が、早駕籠で急ぎに急いで、箱根の関所も乗り打ちし、
江戸に着いたのは、京を発ってわずか三日目でした。

考えてみると、昔の人たちの健脚といったら半端ないですねぇ。
人を乗せた駕籠を担ぎながら走って、京都から江戸までわずか3日で到着できるとは。
当然、いくつかの宿場で選手交代するのでしょうが、そうであっても凄すぎますよね。
便利になりすぎた現代では、到底考えられません。

さて、江戸に着いた局長一行の宿は、言うまでもなく試衛館。
その懐かしい試衛館で、彼らと酒を酌み交わしているのは、局長の兄弟子で
義兄弟の盃もかわしている佐藤彦五郎。
彼は、日野の名主で土方さんの義兄でもあり、新選組に経済的な援助等、
最後まで尽力してくれた人物で、新選組にとっては、恩人とも言えるお方です。

彦五郎さんの話によると、近藤局長の父である周斎と局長の妻子は、
今は日野の彼の家に移り、元気にしているとのこと。
明日にでも訪ねて行って下さいと言われた局長ですが、今度の出府は公用で、
明日からは老中巡りであり、用が済めばすぐに京に戻らねばならないので、
老父や妻子にも会えないと思うがよろしく、と逆にお願いするのでした。

おやまあ、近藤局長には妻子がいたのですね。
そうなのです、実はこの作品では、これまで近藤局長の家族は、全く出てこないので、
ここで初めて局長に妻子がいることがわかるのです。
でも、彦五郎さんの口からは周斎先生の奥さん、すなわち局長のお母さんの名は出ないので、
この作品では、おそらく彼女はいないことになっているのではないでしょうか。
(そういえば、某大河ドラマでは、周斎先生の奥さんが嫌というほど出てきましたよね。
 私はそれが本当に嫌でしょうがなかったのですけどね。

それにしても近藤さん、これは佐藤さんに対し、ちょっと虫がいい話のような気もしますね。
家族に会いに行くというより、お世話になっている佐藤家の人に挨拶しに行くくらいはすべきかと。
確かに今、そのご当主に会っているわけですから、ここで今後をお願いしておけばいいという
気持ちもわからないではないですが。
彦五郎さんがとってもいい人なので、つい甘えてしまうということでしょうか。
どうやら、彼ががいてくださるからこそ、局長は、家族のことは何も心配せずに
心置きなく京で働けると言えそうです。

とはいえ、やっぱり、せっかく江戸に戻ってきたのに妻子にも会わずに京に戻るとは、
奥さんと娘さんが可哀想。
江戸の試衛館から日野へ行くには時間がかかることは確かなので、
それも仕方ないのかな?とも思いますけど。
局長だって、辛いのかもしれません。

一方、和やかな雰囲気の江戸とは裏腹に、京都では、留守を守る総長と副長によって
またも大嵐が吹き荒れようとしていました。

屯所の一室で相対するは、山南総長と土方副長の二人。

(山南)「西本願寺を新選組の屯所にする?馬鹿なことを言わないでくれっ!」

(土方)「何が馬鹿なことだ。俺は本気だっ! 
     西本願寺を探索した結果、あの寺にはこっちから入り込まなけりゃ駄目だ
     ということがわかった。
     虎子を得るにはまず、虎穴に入らなねば駄目だとなっ!」

いよいよ出てきました。西本願寺屯所移転問題。
土方さんの探索の結果、こういう結論に達したというわけですね
そして、ここから、山南さんの運命が大きく変わってしまうと言っても過言ではありません。

(山) 「仏を祀る場は霊場だ。そんなところを屯所にしたら、大勢の信徒たちが迷惑をするっ!」

(土) 「長州はいいのか?長州の奴らは俺達とは違うのかっ!」
 
(山) 「とにかく私は反対だっ!」

(土) 「いくらあんたが反対しようと俺はあの寺を屯所にするっ!
     今日もかっこうの集会場所を見つけてきた。500人は十分に入る。
     庭も広いし、大砲の訓練もできる。」

(山) 「寺の境内で大砲の訓練だ?土方くん、君の頭はどうかしちまったんじゃないのか?」

(土) 「正気だよ。とにかく近藤さんが戻り次第、俺は屯所を西本願寺に移すことを提案するぞ。」

(山) 「君がいくら提案しても、私は絶対に賛成しないっ!」

(土) 「いいとも、近藤さんに裁断してもらおう。」

お互い激しく言い争ってきた二人ですが、土方さんのこの言葉に黙ってしまった山南さん。
しばらくの沈黙のあと、すっくと立ち上がり刀掛けにある刀を取って部屋を出ようとします。

なぜここで山南さんは、黙ってしまったのでしょうか?
それはたぶん、気づいたからだと思います。

近藤さんにこの裁断を託すということは、自分と土方さんの話し合いは決裂。
土方さんを説得することはできなかったということで、そうなれば、どんなに自分が反対したところで
近藤さんは、九分九厘土方さんを支持するだろうと。
そして、万が一、近藤さんが自分を支持したとしても、土方さんはきっと強行するだろうことを。

それは、焼け出された人々への支援を打ち切った時のことや、
遡って松原さんを降格させた時のいきさつを思い返えしてみても
わかるような気がしますから。

(土) 「何処へ行く?」

(山) 「何処へ行こうと勝手だ。私は総長だ。副長の君にいちいち指図は受けないっ!」

(土) 「総長さんよっ、休息所じゃねぇだろうなっ?」

(山) 「なに?」  驚いたような顔の山南さん。

じっと怖い目で山南さんを見つめたまま立ち上がる土方さん。

(土) 「幹部の休息所は、近藤さんはじめ全て届け出てもらってる。内緒は困るぜ。」

山南さん、土方さんの突然の問いに少し動揺しているような感じが。
えっ?まさか、山南さんが休息所を?しかも内緒で?

(山) 「私にそんなものはない。」   否定する山南さんですが・・・

(土) 「そんならいいんだ。しかし、ポツポツ妙な噂が立ち始めてる。」

(山) 「噂? どんな噂だっ?」

(土) 「覚えがねぇんなら気にすることはなかろう。剥きんなると疑われるぜ。」

うううー、土方さんもね、こんな意地悪な物言いはやめたらいいのにって思うんですけど。
ですが、ここでの土方さんは、山南さんの言葉を素直に信じている感もあるんです。
そのことは、後ほどわかるかと思います。

すごい勢いで部屋を出て行く山南さん。
一方、彼の去った後を睨みつけ、「何が総長だっ!」と苛立ちを口にする土方さんですが、
その姿に土方さんの辛い思いが見えたような気もしました。

ああ、なんでこうも意地の張り合いをしてしまうのでしょうね、この二人は。
局長が留守で、二人には協力して隊を纏めていかなければならないという
職務があるというのに。

それぞれが自分の主張を通そうとするばかりで、話し合いにならないため、
分かり合えるはずありません。
土方さんも本当は分かり合いたいと思っているくせに素直になれず、
ムキになり、挙句は悪態をついてしまうし、
これではいつまでたっても二人の関係は平行線のままです。

いつかわかりあえる時がくるといいのに、今はそう願わずにはいられません。
でも、その願いも虚しく、この後、山南さんの中にある変化が生じてきていると
思わざるを得ない出来事が起こってしまいます。
それはまた次回で。
                                                   つづく・・・




新選組始末記 第14話
第14話 「近藤江戸下り」

近藤局長が、将軍家茂の長州出馬を願う会津守護職の親書を持って江戸に向ったのは、
元治元年十月下旬、晩秋の頃でした。

主な随行者は、永倉さんと入隊したばかりの武田観柳斎(草薙幸次郎)。
そして、先発隊として一足先に江戸入りをしている藤堂さん。
ここで初登場となる武田観柳斎ですが、これがまたおしゃべりもおしゃべりで・・・。
その口からは機関銃の弾のごとく言葉が出てきて、さすがの原田さんも辟易といったところ。
とにかくどうしようもないお調子者といった感じです。

駕籠の支度ができたと伝えに来た沖田さん、近藤さんは出かけたと土方さんに言われ、、
江戸へ発つというのに?と驚きますが、実は、おすみさんに会いに行ったと聞かされます。
土方さんによれば、心残りがひとつあり、どうしてもこのままじゃ江戸に発てないと
出て行ったとのこと。その心残りとは言うまでもなく沖田さんとおすみさんのことです。
総司がこのまま憎まれたままでは可哀想だという近藤先生の気持ちでした。

仏壇の前で手を合わせる近藤局長。
傍らにおすみさん。

仏壇の前から下がるとおすみさんの前で三つ指を突き、

「私はこれから江戸へ発つ。その前にどうしてもあなたに侘びが言いたかった。」と局長。

「近藤先生に今更お詫びなど言うてもろうても、父は生きてもどりゃしまへん。」と
                                 まったくつれないおすみさん。
それに対し、

「たとえ許しが得られなくても、私は新選組局長として、心から詫びる。」と
                                深々と頭を下げる局長。

「しかし、今日ここへ来たのはそのことの為だけではないのだ。
 沖田のことだ。あなたのお父さんが亡くなられた事について、我々新選組を恨むのはいい。
 しかしっ、それならっ、この近藤を恨んでくれ。
 沖田だけは憎まないでくれっ、頼む、このとおりだ。」 再び深々と頭を下げる局長です。

「すみさん、あなたの父上の死に沖田に罪はないっ。」

近藤局長の必死の訴えにやっと口を開くおすみさん。

「あの日・・・、父は珍しくうちにしみじみと話をしました。
 もし、うちがお嫁に行くことになったら、祝言の席には出んとどっかでお酒を飲んで
 酔いつぶれてると。父がそんな話をしたのは初めてどした。
 うち、父を頑固な人やとばっかり思うて・・・
 父と娘だけの長い暮しで、初めて親子の心が通いおうた日やったのです。
 それを新選組が・・・。」

そうでしたね、やっと分かり合えた、そんな感じの二人でした。
でも、その時、突然、新選組に追われた浪士が二人の家に逃げ込んできて・・・
結果的に新選組に助っ人にきていた会津藩士によって
玄沢は命を落とすことになったのでした。

 「無理どすっ!うちに恨むなとゆうても無理どすっ!」

じっと聞いていた局長。

「よくわかる。しかし、わかるからこそ、沖田だけは憎まないでやってくれとお願いしているのだ。
 すみさん、あなたの悲しみを和らげるのにこの私にはできなくても沖田にはできることがあるだろう?
 私の言う言葉の意味をよーく考えて貰いたい。」

「近藤先生。」 少しだけですが、心を動かされたような感じのおすみさんです。

「出発の時が迫っている。すみさん、沖田の為にも気短なことはしないで貰いたい。」

そう言い残し、もう一度深々と頭を下げて出て行く局長。

果たして、近藤局長の必死の思いは、おすみさんの心に届いたでしょうか?
固く閉ざされた心を少しでも溶かすことはできたでしょうか?
その結果がわかるのは、もう少し先かもしれません。

そして、屯所に戻った近藤局長は、土方さん、沖田さんら幹部および隊士達に見送られ、
江戸へと旅立っていくのでした。

局長達が出発したのを見届けると、すぐに飛んだ副長の厳しい声。

「二番隊、五番隊、俺に続けっ!直ちに西本願寺に行くっ。」

副長、西本願寺の探索、あの時の言葉どおり始めているのですね。
この探索の結果で、西本願寺への屯所移転の話が出てくるわけで、
それが、総長と副長の間に修復不可能な決定的な亀裂を生むことになると思うと
本当に辛いです。

一方、先に江戸入りした藤堂さんは、以前から知り合いだった同門の北辰一刀流
伊東甲子太郎(戸浦六宏)の深川佐賀町にある道場を訪ねていました。
藤堂さんは、近藤さんが着く前にどうしてもお願いしたいことがあると伊東に切り出します。
それは、とりもなおさず伊東に新選組に入って欲しいということでした。

(伊)「私がなぜ新選組に? 池田屋事件以来、新選組は人斬り狼の評判高く、
    大変なものではないか。」

(藤)「いや、そこです。このままですと、新選組は全くの人斬りに成り下がってしまいます。
    私は池田屋でつくづくそのことを悟りました。」

ええ?藤堂さん、そんな時からもうそんなことを考えていたのですか?

(藤)「もともと私は、先生と同じように尊皇攘夷の志厚い者です。
    近藤先生や土方さんも心の底では今でも攘夷の志を持っていると思います。
    しかし、新選組は大きくなり、有名になればなるほど違った方向に動いています。
    隊内では私と同じ考えの者がたくさんいて、近頃ではそういう話ばかりしているんです。」

藤堂さんは、そんな風に考えていたのですね。
ですが、違った方向とはいったい何なのでしょうか?

(伊)「近藤さんや土方さんに攘夷の志があるのなら、
    私に頼むよりまず二人に話すべきではないのかね?」

さすが、伊東先生。仰ることにも筋は通っています。
そうですよ、藤堂さん。隊の方向性に疑問があるのなら、第三者に相談するよりも先ずは、
局長と副長に話すべきでしょう?

(藤)「あっ・・・、近藤先生や土方さんは、隊をまとめることに精一杯で、
    お二人とゆっくりお話をする暇などありません。」

ええー?そんなあ、それじゃあ駄目でしょう。
大事なことなのだから、とにかく時間を作ってもらい話をしなくちゃ。
話をした結果、やはり駄目だったというのであれば、そこで初めて第三者に助けを求めても
よかったのではないですか?
だって、近藤さんも土方さんも、試衛館以来の仲間である藤堂さんが、
よもやそんな思いを抱いているとは露ほども思っていないはずだもの。

ちゃんと話をすれば、彼が納得いく回答ももしかしたら得られたかも知れない。
そうすれば、これからの新選組の行く末を近藤局長の運命を左右することになる
伊東の入隊そのものがなかったかもしれないのに・・・。
なぜ、独断で伊東なんかを新選組に誘ってしまったのか?

(伊)「君は隊内に同じ考えの者がいると言ったが、幹部にもいるのかね?」

(藤)「はい。確かめてはいませんが、たとえば総長の山南さんなど、はっきりそうです。」

(伊)「総長の山南・・・。」

(藤)「ただし、山南さんと土方さんは憎みあっていて、山南さんの言うことでは
    土方さんも聞きません。総長と副長がいがみ合っていては、
    この先新選組はどうなってしまうことか・・・。」

いえいえ、藤堂さん。二人は憎みあってなんていませんよ。ただ意見が違うだけです。
でも、今の二人を見れば誰だってそう思いますよね。
それは仕方ないことかもしれません。

(藤)「お願いです。助けて下さい。」

(伊)「私にどうしろと言うのだ?」

(藤)「ですから、新選組にお入り頂きたいのです。先生の学識と指導力で
    新選組を立て直して欲しいんです。
    伊東先生なら静かに論を尽くされます。隊士も納得します。
    場合によっては、近藤先生や土方さんも考えを変えるかもしれません。」

うーん? それはどうでしょうか?
伊東さんの言で局長と副長が考えを変えるというのは甘い気が。
局長については、その可能性もわずかにはあるかもしれないとも思えますが、
少なくとも土方さんは無理と感じます。
なぜって、学者肌の伊東さんと土方さんが意気投合できるとは到底思えませんから。

(伊)「妙なことを聞くが藤堂君、君は近藤さんに疎まれているのかね?」

これまた、なかなか鋭い質問です。

(藤)「いいえ、その逆です。近藤先生は私を信じて下さいます。
    だから今度も供に選ばれたんです。」

(伊)「その近藤さんを裏切るのか?」

(藤)「そうなりたくないんですっ!私が近藤先生の日頃のご恩に報いる道は、
    伊東先生を動かして近藤局長を説得して頂き、その上でお二人力を合わせて
    新選組本来の道に戻して頂く。それ以外にないんですっ!」

ねえ、藤堂さん。
自分は信頼されているとわかっていて、しかも近藤先生を裏切りたくないなら、
日頃のご恩に報いたいのであれば、問題解決のためにすべきことは、何度も言いますが、
近藤先生と膝を割って話すことが先決であり、それを飛び越え、伊東に会いに行くことでは
決してなかったはず。
伊東が入隊し、思い通りに事が進めばいいですが、そうならなかった場合、その時はどうするのか、
駄目だった場合、脱退を許されない新選組において、どうするつもりだったのか?
果たして、そこまで考えての行動だったのでしょうか?

ひととおり話を聞き終えた伊東の返答は、やはりそれは難しいというものでしたが、
そこを何とかと譲らぬ藤堂さん。とにかく自分が段取りをつけるので近藤局長に会って欲しい、
と懇願して、辞去するのですが・・・
藤堂さんが去るとすぐに、伊東の弟である鈴木三木三郎や篠原泰之進等、
後に伊東と一緒に入隊することになる、いわゆる伊東一派の者達が現れ、
彼らは、佐幕と勤皇に真っ二つとなった新選組に誘われたことを耳寄りな話だと
なにやら不穏な笑いを浮かべます。
そして、伊東本人も藤堂さんには難しいと言ったものの、
「そうだ、耳寄りな話だ。私の心も揺れ動いている・・・」と胸中を吐露するのでした。

一癖も二癖もありそうな、見るからに一筋縄ではいかなそうな伊東甲子太郎をはじめとする面々。
彼らが入隊すれば何も起こらないはずがない、そう予感させるような伊東派の初登場でした。

                                               次回へつづく・・・




新選組始末記 第13話 8
第13話 「壬生の嵐」8

京都守護職から親書を賜った近藤局長は、その親書を持って江戸へ行くことを
そして、その留守中は、山南総長と土方副長が指揮を取る旨、隊士全員の前で伝え、
加えて将軍が京都に入れば、いよいよ大戦(おおいくさ)になる、京都にも何が起こるかわからない、
ますます隊務に精励せよと厳しい眼差しで隊士達を鼓舞します。

実はその局長の言葉が終わった後、またひとつ波乱が・・・。

(山南)「それでは、解散する。
     罹災者救援隊の諸君は、いつものように私と一緒に来てくれ。」

意気揚々の総長にすかさず待ったをかけたのは副長。

(土方)「ちょっと待てぇ。
     焼け出されの面倒見はもうおしまいだ。
     代わりに新しく西本願寺探索隊を編成する。」 

(山) 「土方君・・・君は。」     驚き顔の総長。
     
(土) 「あの寺は、長州の残党を匿っているという噂がもっぱらだ。
     また、壬生に近いので寺に潜んで新選組を探っているという噂もある。
     嘘か本当か確かめる。隊長は俺が直接務める。」 

(山) 「土方君、被災者達はどうなるんだ?
     今日も我々が来るのを首を長くして待っているんだ。」 

(土) 「そんな仕事は町奉行所にやらせろっ。
     市中も満足に取り締まれねぇような奉行所には打って付けだ。」

土方さんとの話では埒が明かないと思ったか、山南さんは近藤局長の前に歩み出ると
判断を仰ぎます。

(山) 「局長、ご採決を。」          

が、山南さんの顔を厳しい眼差しでじっと見ながら発した局長の一言は、

「土方の言が正しい。」 

その言葉だけを残して、立ち去る局長。
副長の解散だの言葉で、引き上げていく隊士達。
後には、一人呆然と立ちつくす山南さんの姿。
そして、その寂しげな背中を心配そうに見つめていたのは、
沖田さんともう一人、藤堂さんの二人でした。

この時の、山南さんの胸中はどんなものだったでしょう。
おそらく、局長は自分に賛同してくれると思ったと思うのです。
賞金を焼け出された人たちの為に出してくれた局長です。
救援活動をねぎらい、衣服や食べ物もできるだけ出してやれと言ってくれた局長です。
それが、手のひらを返したように今は拒否された。
かなりのショックだったに違いありません。

ただ、あの時は、確かにあの時点ではそれでよかった。
でも、ここに来て情勢が変わり、新選組として、組織として
今は、救援活動よりも優先してすべきことができたということなのだと思います。

近藤局長だって、被災者はどうなってもいいと思っているわけでは決してないでしょう。
けれど、新選組局長として、情勢を見極め、組織として今何を一番にすべきかを考えるのは
当然であり、臨機応変に対応していくことは長としての責務ですから、
状況に応じて対応を変えるのは当たり前のこと。
もし、それができなければ、組織は存続できなくなってしまいます。
だから、今回は土方さんを支持した。
ですが、おそらく、その思いは山南さんには伝わっていない。
それは、やはり新選組に対する考え方、思いの違いの所為だと思います。

でも、山南総長は、新選組をいったいどういう組織にしたいのでしょう?
総長として、どんな方向にもっていきたいのか?それがいまひとつ、わかりません。
今にも長州が攻めてくるかもしれないという状況下で、今、新選組が地域のボランティア活動に
精を出すことが本当に正しいことなのか?
そう考えると、心情的には山南さんを支持したい気持ちも大きいですが、
どうしても疑問符がついてしまいます。

部屋を出た山南さんに声をかけた沖田さん。

(沖)「山南さん。」

(山)「総司君か。」

(沖)「あまり気にしないほうがいいですよ。
    土方さんは、新選組を考えるあまり、つい言葉が強くなるんです。」

(山)「ふっ、そうかな。
    私は・・・、土方君とはもう折り合えない気がする。もとになる考え方のところでね。」

(沖)「山南さん。」

(山)「そうだ、愚痴に聞こえたら許してくれ。」

去っていく山南さんを見る沖田さんの本当に心配そうな表情。
でも、その漠然とした心配は、やがて現実のものとなって
沖田さんの身にも降りかかってくることになると思うと、辛くてなりません。

場面は変わって、部屋に戻ってきた近藤、土方の両名。
そして、土方さんはひとり、ものすごく苛立っているご様子。

(土)「山南のやろう、ちぇっ、どうしてあいつには俺の言うことがわからないんだっ!」

腕組みをし、黙って聞いている近藤さん。

(土)「近藤さん、今あんたに江戸に行かれることがだんだん心細くなってきたぜ。
    俺だけで、留守を守り通せるかどうか。」

またもでました、副長の弱気発言。
副長の口から、心細いなどという言葉が出るとは。
でも、土方さんだって色々悩み、苦しみながら新選組のことを支えてるんですよね。

(近)「守れるさ。嵐だ。嵐なんだよ、歳。」

(土)「ええ?」

(近)「新選組は今、内からも外からも吹き荒れる嵐の中にいるんだ。
    お前と山南の争いも、当然起きてくる嵐のひとつだ。

    それにな、新選組はいつも嵐の中を歩まなければならない。
    一難が去ってもまたすぐ次の一難が来る。これは避けられない。
    おそらくこれが新選組の運命だろう。

    だがな、歳。
    お前と俺が最後まで手を組んでこの嵐の中を突っ走れば、怖いものは何一つないっ!
    今度の嵐も必ず突き抜けられる。
    その為にも俺は、必ず将軍を江戸から連れて来る。」

(土)「近藤さん、よくわかった。」

局長の言葉に納得したような土方さん。
でも・・・

私も局長には江戸へ行って欲しくありません。
だって、だって、留守中の京都では大変なことが起こってしまうから。
それにこの江戸下りで、局長は伊東さんと出会い、京都に呼び寄せることになるのだから。
江戸へ行っていいことなんて何もないのに・・・。

けれど、新選組に吹く嵐が、これから更に激しさを増し、
まだまだ幾度も襲い掛かってくることになろうとは、
今はまだ誰も知る由もないことなのですよね。

堅い話から一転、思い出したように「ところで、総司のあの娘な、どうする?」と問う土方さんに
お孝さんが良い手を考えてくれた、女には男が持っていない知恵があると笑う局長。
反対に「お前もそろそろ休息所を設けたらどうだ?」と水を向けらられ、
「あ?ああ、ははは。」とあいまいに苦い笑いで誤魔化す土方さん。

これまでの重い雰囲気から、少し場が和んだかに見えましたが、
すぐに真剣な面持ちで夕日の方向を見上げる局長、そして副長。
別の場所で夕日に照らされる沖田さんの姿。
転じて、真っ赤な夕日が映し出され、エンディングナレーション。


  この時、近藤勇の胸中をよぎるものは、わが身の移り変わり。

  一介の浪士が、己の運命を京の風雲に託して上洛。

  生死を越えて、二年(ふたとせ)の後、今、いやしくも京都守護職の信任を得て

  その親書を携え、江戸に向わんとする。まさに感慨無量。

  京の空を茜に染める夕映えの輝きは、何を占うのか?

  前途にいかなる嵐ありとて我往かん。

  その心中は、男の気概に満ち満ちていた。




物語も中盤となり、これから終盤に向け更に色々なエピソードが繰り広げらることになりますが、
(ほとんどが辛いお話になるんですけどね。)
次回の第14話を経て、いよいよ山南さんの例の事件へと話は進みます。
私にとっては運命の第15話と16話。
今回も随分と長くなってしまいましたし、うまくまとめられるか心配はありますが、
がんばってUPします。


新選組始末記 第13話 7
第13話 「壬生の嵐」7

蛤御門の変の後、朝廷は7月に長州追討の勅命を幕府に下すも、諸藩は容易に動こうとはせず、
8月には将軍自らが陣頭に立つと発表したが、時はいたずらに流れ、既に9月。
山南さんと沖田さんがおすみさんの家に出向いていた頃、
屯所では、局長、副長をはじめ、永倉、原田、井上、藤堂の幹部連中が集まり
その件について話し合いをしていました。

長州征伐の勅命が出てから二ヶ月が経つが、幕府の総督は決まらず、
越前、尾張、紀伊の御三家でたらい回しにしていて、しかもどこも引き受ける気配はない状態。
そんなでは、幕府が攻めていく前に長州のほうから攻め上ってくる。
もう、江戸の将軍が陣頭に立たなければ駄目だというのが皆の見解。

そして、その思いは局長も同じで、彼は既に守護職と禁裏守衛総督に
将軍が急遽江戸を立つよう嘆願書を出してきたとのこと。
しかし、返事は無しのつぶてで、土方さんも幕府はどこまで腐ってしまったのか、
このままずるずるいけば、長州征伐などどこかにいってしまう、
そうなれば、幕府などないのと同じになると、怒りを顕に。
ですが、局長には今考えていることがあるとのこと。

(土)「考えていること? なんだ?」    え?俺は初耳だぞ?といった顔の土方さん。

何も言わず、おもむろに障子を開けて廊下に出る局長。
扇子を仰ぎながら、縁側にしゃがむと横に来た土方さんに俺は江戸へ行こうと思うと告げます。
将軍に会って直訴し、江戸城から京都に連れて来ると。

(土)「あんたが将軍に直訴か・・・。なるほどな。」

と、そこへ戻ってきた山南、沖田の両名。

(沖) 「ただ今戻りました。」

(土) 「医者の家に金を届けに行ったにしちゃあ、随分と手間がかかったな。」 
                           
うわ、またも嫌味全開の副長さん。
そして、総司の方に目をやるなり

    「おい、総司? おめぇ、酔ってるな?」と。 

しっかりしているつもりでも、副長の目は誤魔化せませんね。  

(山) 「土方君、まあ、いいじゃないか。総司君だって酔いたい時があるんだ。」 

(土) 「よかねえっ だいたいあんた、総長のくせに隊士を甘やかし過ぎる。
     その分だけみんな俺にツケが回ってくる。」

(山) 「土方君、ツケとはどういうことだ?」

ここで、また総長と副長のバトル勃発。

(土) 「あんたが隊士を骨抜きにした分だけ、俺が鍛え直さなきゃならんという事だ。」

(原) 「副長、総司はきっとあの娘の憎しみが解けなくて、それで酒を飲んだんだ。
     それほどまで言わなくたって。」 

(土) 「そんなことはわかってる。口を出すな。」  原田さんのせっかくの助け舟も撃沈です。

(山) 「土方君、ここにいるのはみんな、江戸の試衛館の仲間だ。
     仲間の一人に辛いことがあった時には、皆でその悩みを慰めあったっていいじゃないか。
     それが、試衛館の良さだったはずだ。」

鋭い目で山南さんに向きあう土方さん。
一呼吸おき、落ち着いた口調で話し始めます。

「山南さんよぉ、あんた間違ってるよ。ここは江戸じゃねぇ。試衛館でもねぇ。
 俺たちゃあ新選組だ。試衛館はもう消えた。あるのは京都の新選組だけだ。」

(山) 「土方君。」

そして、口調は激しくなり、

(土) 「いいかっ!、もっとはっきり言うっ!
     おためごかしの焼き出されの面倒見なんざ、もうやめろっ
     そういうことが、新選組の行く道を狂わせるんだっ。
     新選組が人斬りと言われて何が恐ろしいんだ?狼と言われて何が悲しいんだ?
     それでいいじゃねぇか。
     近藤さんは言ったはずだ。今の世の評判なんざ気にするなと。
     俺たちゃあ百年、二百年先の世の評判を考えりゃあいいんだ。」

そうですか、こういうことだったのですね。
こういう思いをずっと抱いて、山南さん達の行動を見ていたんですね。
それで、今までの不機嫌そうだった理由も嫌味連発の理由もわかった気がします。
けれど、この作品の土方さんは、ちょっと子供っぽいところがありますよね。
何かあるとすぐに不機嫌そうになるところなど、特にね。

(山) 「土方君、君は間違っている。」

(土) 「それも後の世の人間の決めることだ。今、あんたや俺の決めることじゃねぇ。」
 
(山) 「そんなことじゃないっ、私の言いたいことはっ!」

ここで、「二人とも、もうやめろっ!」と局長の声。
それで、ここでの二人の諍いは、一先ず終わりとなるのですが、
山南さんが言いたかったこととは何だったのか?
本当は、もう少し聞いてみたかったです。

ここでも、明らかに二人の新選組に対する考え方の違いが浮き彫りにされています。
昔とあまりかわらない考えの山南さん、絶えず前だけを見て気持ちを切り替えていく土方さん。
顔を合わせれば、口を開けばどうしても、言い争いになってしまう二人。
二人の考え方は、ますます離れていってしまっているように感じます。

飲みつけぬ酒を飲んで苦しそうな総司を寝かせてやれとの局長の言に従い、
山南さんと他の皆は総司と一緒に引き上げて行きますが、
一人残った土方さん、意外にも苦い顔で小さくため息をつき、先ほどの威勢はどこへやら、
トボトボと力ない様子で局長の居る座敷へと上がります。

(土)「なあ・・・、近藤さんよ。俺が総司の心配をしてねぇと思うか?
    俺だって総司のことは気にしてる。玄沢の一件についちゃあ、寝覚めはよくねぇ。
    だがなあ、今俺が甘い顔をみせりゃあ・・・」  

近藤さんだけに見せる土方さんの一面。
そこまで黙って聞いていた近藤さん。
土方さんの言葉を遮るように「歳っ、わかっておる。」と優しい眼差し。
しばし見詰め合うと、土方さんも安心したような穏やかな表情に。
こちらの二人は、最後まで語らなくても、気持ちが通じ合うんですね。

そして、近藤さんは、頭を冷やしてくる、男ばかりがガミガミ言い合っても
良い知恵は浮かばないとお孝さんのいる醒ヶ井へ。
そこでお孝さんから先生がおすみさんの所へ行ってあげて欲しい、
近藤先生ならおすみさんもきっと話を聞いてくれるだろうと言われ、
なるほど、それは気がつかなかったと喜ぶ局長。
いい知恵を授かり、俺の心も決まったと江戸行きをお孝さんに打ち明けるのでした。

そう言われてみれば、父親を斬った責任は新選組にあるのに、その長たる近藤さんが今まで
おすみさんの所へ行かなかったのは、迂闊ではなかったかと。
初めから局長が出張っていれば、ここまでこじれなかったかったような気もしないでもありません。

さて、江戸へ発つと決めた近藤さんですが、これから先はどうなりますか?
実は、もうひと波乱巻き起こるのですが、続きは次回で。

                                            つづく・・・


新選組始末記 第13話 6
第13話 「壬生の嵐」6

ところは変わって、おすみさんの家。
そこには、八木さん夫婦の姿が。
どうやら、お二人もおすみさんを手伝っているようで、
往診に行ったおすみさんを夕餉の支度をして待っているところのよう。

すると、まもなくとても疲れた様子で帰ってきたおすみさん。
何も食べたくないと言いますが、身体に毒だ、明日も病人やケガ人が殺到するのに
あんたが身体を壊したらどうする?と八木さん夫婦に諭され、しぶしぶ頷いたところに
「すみさんっ!」と突然の大きな声。

「すみさんっ!、すみさんはいませんか?沖田ですっ!」

その声を聞くなり、部屋の隅に隠れるように行ってしまうおすみさん。
そこに現れたのは、山南さんに肩を借りながら、やっとの感じで歩いてきた様子の沖田さん。

(まさ)「沖田はん、どないしはりました?」

(沖)「奥さん、すみさんに話があります。すみさんは、新選組を誤解している。
    私を誤解しているんです。」

(まさ)「大きな声を出さんといておくれやす。」   おまささん、本当に困り顔。

(沖)「私は、理由があって恨まれるんだったら、どんなに恨まれたって構わない。
    しかし、これは違う。すみさんの全くの誤解なんです。」

(沖)「すみさん、すみさぁーん!」

おすみさんの後姿に大声で呼びかけるも、反応はなく・・
沖田さんの大きな声に困ったおまさんが自分が話してくるからとおすみさんの下へ。

咳き込みながらも、すみさんの誤解が解けるまではここを動かないと山南さんに告げる沖田さん。

一方、ふすまの向こうの部屋では、どうしても沖田さんには会わないと言い張るおすみさん。

(すみ)「会わしまへん、沖田はんの顔なんか、二度と見たいことおへんっ!」

(まさ)「そやけど、おすみはん。あんたは、ほんまは沖田はんが好きなんと違いますか?
     前にうちに言うたこと、あれは嘘どすか?」

(すみ)「前は・・・確かに好きどした。そやけど、今は嫌いどす。ほんまに嫌いどすっ!」

(まさ)「おすみはんっ!ひと時の気持ちの高ぶりで、大事なこと、嘘言うたらあきまへん。
     これっきりになってしまうかもしれへんのどすえ。
     もういっぺん聞きます。ほんまにあんた、沖田はんをもう好きではないんどすな?」

おまささんの言葉に返事ができなでいたおすみさんでしたが、
「すみさん、出て来てくれ。話を聞いてくれ。」という沖田さんの声を聞いたとたん、
「嫌いどすっ!うちは会わしまへん。あの人は、お父はんの言うとおり、人斬りどす。
 あの人のいる新選組は人斬りの群れどすっ!」とまた意地をはってしまうのでした。

ああ、もう少しでおすみさんの気持ちが少しだけ落ち着き、冷静になろうかという矢先だったのに・・・
沖田さんの声で、おまささんの説得が水の泡になってしまいましたー。
それにしても、彼女の頑固さは沖田さんが言ったとおり、父親譲り、いえ、それ以上ではないかと。
彼女の気持ちもわからないではないですが・・・。それにしても・・・。

さて、そこに割って入ったのが、八木さんのご主人。
おすみさんの気持ちがおさまったら、自分からも話すので今日のところはと
二人に引き取るよう促しますが、あきらめ切れない沖田さんは・・・。

「すみさんっ!そんな話はない、あんたは一方的だっ。私の話を聞けーっ。」と
大声は近所迷惑だとの山南さんの言葉にも耳を貸さず、「私は我慢できない」と暴れて・・・。
そこで「ピシャリ」といきなり彼の頬に飛んだのは山南さんの平手。
「沖田っ!、見苦しいぞ!」            

それでもあきらめきれず、山南さんに引きずられるように連れて行かれながらも、
おすみさんの名を何度も叫ぶ沖田さんでした。

沖田さん達が去った後、八木さん夫妻に明日にでもこの家を出ると言い出すおすみさん。
父親がいないこの家、新選組がいるこの村にはもう一日も居たくないと。
行くあてはなくとも、沖田さんさえいないところならどこでもいいのだと。
ですが、その決心も、八木さんのご主人の病人やけが人をどうする、
みんなはあんたを頼りにしているという一言で揺らぎ、泣き崩れるしかありませんでした。

本来ならば、おすみさんは医者ではないから、いくら頼りにされていると言われても
病人やけが人のことは診る必要はないし、冷たい言い方をすれば、その人達のことは
考えなくてもよく、どうしても出て行きたいのであれば、行くこともできるはずなんです。
それでもいいのです。
でも、それができないところに頑固さだけではない彼女の優しい性格が、表れている気がします。
そして、そんな彼女だからこそ、沖田さんも好きになったのかもしれません。

ああ~、これでまた二人の距離は、ますます離れてしまったのではないでしょうか。
せっかくの山南さんの二人を思う気持ちも裏目に出てしまいました。
悲しいかな、嫌な予感は的中することに。
なぜ、いつもは慎重に物事を運ぶイメージの山南さんが、自力で歩けないほど飲んだ沖田さんを
おすみさんに会わせることにしてしまったのか?
そこが、どうしても腑に落ちません。
まさか、二人を思うあまり、彼もあせったとか?
なあんてことは、うーん、やっぱり考えられませんよねぇ。

結局、沖田さんもおすみさんも互いに心の傷を更に広げることになってしまいました。
この切ない心のすれ違いは、いったいつまで続くのでしょうか?

                                           次回につづく・・・




新選組始末記 第13話 5
第13話 「壬生の嵐」5

「やってるな、総司君。」

自棄酒をあおっている沖田さんのもとに現れたのは山南さん。

(沖)「山南さん、ここがよくわかった。でもここは、私一人の休息所ですから。」

(山)「八木さんのお奥さんに聞いたんだよ。奥さん、心配していたぞ。
    いつになく、君の言葉が激しいって。」

そうですか、おまささんに聞いてきたのですね。
それで、心配して様子を見に来てくれたわけですね。
やっぱり優しいなあ、山南さんは。

(沖)「激しくもなりますよっ! あの頑固娘にはっ
    私を誤解して、誤解したまま憎んでいる。それが我慢できない、私にはっ!」

激しい口調でくってかかり、山南さんの手を掴み、訴えるような目で山南さんを見つめる沖田さん。
その眼差しには、彼の胸の痛みすべてが反映されているような悲壮感すらあります。

(山)「総司君、それだけあの娘のことを気にしていながら、その君がなぜ
    今まであの娘を避けてきたんだ。会ってやらなかったんだ?」

ずっと突っ伏したまま、そして、新しい徳利を持ってきた娘からはそれをひったくるという乱暴さ。
本当に日頃の沖田さんからは想像もできないような行為の連続に驚かされます。
でも、それは、それほど辛くてたまらない、苦しいという心の現われなのかもしれません。

(沖)「私は、こんな身体です。私がどんなに考えてもすみさんを幸せにはできない。」

ああ、そうだったのですね。
自分の病を気にして、だから敢えておすみさんから距離を置いていた。
               
(山)「そう気持ちを決めた君が、ではなぜ今苦しむんだ?なぜ、ずっと悩んでいるんだ?」
             
おお、さすが山南さん。鋭い質問。
その言葉に、顔を上げ、山南さんをじっと見つめる沖田さん。

(山)「私から言おうか? 君は口では色々と言っているが、ホントはすみさんのことが好きなんだよ。
    違うかね?」       

(沖)「違いません。」  おっと、沖田さん、即答しましたよ。
               今まであんなに荒れていたのにこれは意外。
               山南さんの前では自然と素直になれてしまうということでしょうか?
               それは、やはり山南さんの人徳がなせる業なのかもしれません。
          
咳き込む沖田さんに「もう無理して酒を飲むな。余計身体を悪くする。」と言って、
徳利を下に置いてしまう山南さん。
さらに激しく咳き込む沖田さんの背中をさする姿は、本当に優しさに満ちています。

(山)「総司君、私はこの前も言ったように総長でありながら、満足なこともできない。
    しかしな、君の事は本気で心配しているんだ。何でも話してくれたまえ。」

どこまでも優しく、そして暖かい。
沖田さんにとっては、本当に頼りにできる、信頼できるかけがえのない人に違いありません。
ただ・・・

(沖)「池田屋以来、新選組は大変な立場になっています。
    近藤局長は、その苦しみを一人で背負っています。
    土方さんは、局長を助けて自分ひとりで鬼の役を買って出て隊をまとめている。
    そんな二人を見ていると自分のことなんて言えない。
    ここで山南さんに言った。さっぱりしました。もういい、あの娘のことは諦めました。」

ただ、沖田さんにとって山南さんは、大事な人であることには間違いないけれど、
やっぱり、3番目のお兄さんなのかな?と。
人の気持ちはそう単純なものではないとわかっているつもりですが、敢えて順番をつけるとすると
そうなるのかな?と思えるような上記の台詞だった気がします。

そんな風に思ってしまうは、私がひねくれ者だからかもしれませんが、
この言葉を聞いた時、なぜか山南さんが少し可哀想に思えてしまいました。
その反面、土方さんのことはわかってくれているんだと嬉しく思う私もいました。
(こんなところでも、つい土方贔屓が~。どうか広い心でお許しを~。

(山)「違うよ、総司君。私が言いたいのはそんなことではない。」

そうですよね、誰も諦めろなんて言ってませんよね。
むしろその逆でしょ?

(山)「総司君、今夜これからすみさんの所へ行きたまえ。
    行って正直に今言った事を話したまえ。」      えっ?今から?

(沖)「いやあ・・・、いやあ・・・」    首を振り、そんなことはできないとでも言っている様な声。

確かに良い提案だとは思います。けれど、何も今日でなくても・・・という気も。
なぜって、なにしろぐでんぐでんに酔っ払っている沖田さんなので、果たして大丈夫かなと。

(山)「私からみれば、両方とも意地を張っているんだ。まず君からその意地を捨てるんだ。
    行きたまえ。一人で行けなかったら私が着いて行こう。」

代金を支払う山南さんに自分が飲んだのだから自分が払うと言う沖田さんですが、
腹立ち紛れに賞金を使ってはいけない、その金は君の金ではないはずだと
ここはきっぱりと言い放つ山南さん。
と、沖田さん、突然水桶に向かったかと思うと、人の家に行くのに酒を飲んで行ってはまずいと
水をがぶ飲みするのでした。

どうやら、おすみさんの家に行く決心をしたようですが・・・
うーん、ホントにホントに大丈夫かな?

                                        次回へつづく・・・


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